NPO多言語広場CELULAS

音の幅を広げると、受け取る世界も広がる

10月の6日~8日に、NPO多言語広場CELULASの全国のディネーターと希望するメンバーが集まって、多言語活動フォーラム2018が滋賀県で開催されました。

今回の多言語活動フォーラムでは、セルラスの多言語活動の徹底検証を全コーディネーターが15分のプレゼンをし、それを受けてのグループタイムでディスカッションで深めていきました。

プレゼンのテーマは、多言語活動として私たちが行っている、①ロールプレイ ②シャドウイング ③ワンマンロールプレイ ④TACO のいずれかを選んで自分の発見や今到達していることを話しました。

それぞれ簡単に説明すると、①ロールプレイはセルラスのオリジナルのストーリー(全25話)を日本語でその設定からみんなでイメージを話し合って役に分かれてロールプレイするもの。母語である日本語でそのストーリーを色々な役になって体験し、イメージをメンバーと共有することが、その後そのストーリーを多言語で理解し話す土台になります。

②シャドウイングはオリジナルのストーリーを多言語のネイティブ声優による音声CDを聞いて、聞いた途端に口に出す(影のようにぴったりくっついて発生するからシャドウイングです)活動です。

聞いた途端に口に出すのは、最初はなかなかできません。けれど続けていると、その言語を聞いた途端にその言語で反応する回路が頭の中にできると感じます。

この回路は日本語を聞いて日本語で考え日本語を口に出す回路とは、別の回路です。だからスペイン語を聞くとスペイン語が、ロシア語を聞くとロシア語が、中国語を聞くと中国語が反射的に出てくるようになるのが、シャドイウングの不思議な働きです。
今回私はプレゼンで、このシャドウイングを取り上げました。

③ワンマンロールプレイは一人でストーリーの全部の役を言語でやります。ロールプレイで作った役のイメージを体を使って表現し、一人でそれぞれの役になっていろんな言語でストーリーの場面を表現します。

④TACOは多言語コミュニケーションです。一対一になって、自分の持っているありったけの多言語でコミュニケーションをします。ストーリーの言葉が自分の言葉として再構成されて出てくる瞬間は、楽しくて自分でもびっくりします。

今説明した①から④のどの多言語の活動も全部つながっていて意味があります。今回はその中でもシャドイウングについて自分が感じていること、発見したことをプレゼンでシェアしました。

それが表題の「音の幅を広げると、受け取る世界も広がる」です。

私は、セルラスに入る前には、英語以外の言語に違和感や嫌悪感さえ抱いていいました。
韓国語の会話が怒っているように聞こえたり、「ぱぴぷぺぽ」とか「ちゃちちゅちぇちょ」の音が、幼い子供の話し声のように感じたりしたのです。

ところがセルラスに入って韓国語のシャドウイングを続けたら、韓国語の会話は普通の人間同士の話しだと感じられるようになりました。

その後スペイン語や中国語が始まったときも、最初は全く聞き取れず、口からも意味のある音が出せなかったし、話せるようになるなんて思えませんでした。

けれどシャドイウングを続けるうちに、どの言語も、親しみのある人間同士の会話になり、いつの間にか自分の口からもぽろぽろと口に出す言葉になってきたのです。

3年前にロシア語が新しく加わったときは、初めて聞いたロシア語なのに、聞いた途端に、どの場面の誰のセリフか、イメージが立ち上がり場面が見えました。

昔韓国語を聞いて怒っていると思ったり、幼い子供の言葉に思えたのは、私が日本語の音の幅から一歩も出ないで韓国語を聞いていたからだったのです。

日本語の音の世界で別の言語を聞くと、違和感や本来の意味とはかけ離れた感情を日本語の音感で受け取ってしまいます。

シャドイウングは聞こえた途端に口に出すうちに日本語以外の言葉の音の幅をそのまま受け入れる器を私たちの中に育ててくれるのです。

音の違いを受け止めることで、受け取れる世界がとても親しみのあるものになります。

ロシア語もスペイン語も中国語も、人間の言葉だし、どんな人がその言葉をどんな思いで発しているのか、瞬時に想像がつくようになります。

同時に、日本語にはない音も聞き取れ発音できるようになります。そしてその言葉らしさや、感情表現、生活習慣や文化の違いさえ、ことばと一緒に感じ取り、自分のものにしていけるのです。

同じグループディスカッションのメンバーだった関西のコーディネーターのシマちゃんも、シャドイウングをテーマにプレゼンしました。

彼女は仕事で英語を話す機会が多いのですが、よく「その英語どこで身に着けたの?まるでネイティブみたいですね」といわれることが、入会してからとても増えたそうです。

彼女は留学や海外に住んだ経験はないそうです。だからこれはセルラスで身に着けた英語なんだと言っていました。
そんな彼女がシャドウイングについてプレゼンした中で「英語のシャドイウングをしたからネイティブのような発音になったのではなくて、多言語のシャドイウングをしたから身についたことなんだ」と言ったのです!

英語だけをシャドウイングしていたら、日本語と英語の違いの大きさ、英語の発音の難しさばかりが意識されたでしょう。

けれど多言語のシャドイウングは、どんなに違った音でも素直にただまねをして口に出します。

するとどんな音も抵抗なく聞けるし、口から出せるようになり、耳も口も柔軟に広い音域をカバーできるようになるのです。

シャドイウングが多言語であることの大切さを、今一度彼女のおかげで再確認できました。

どんなに音やリズム、メロディーが違っていても、人間の言葉である限り、きっと聞き取り、理解し、話すことができる。その表現する中身は、ことばが違っても共通のものがたくさんある。だから人間同士は必ず分かり合えるし、だからこそ相手の言葉で話したくなる。

多言語習得活動で行うどんな活動も、ただの技術でも方法でもなくて、人間同士きっと分かり合えるという信頼を前提としたコミュニケーションの力を育ててくれているんだと思います。
秋の関東での講演会は以下の溝の口が最終です。ご興味のある方、是非!

<溝の口講演会>
【4】2018年11月10日(土)14:30~16:30
詳細
お申込みはこちらから

ABOUT ME
shigechan1783@gmail.com
NPO多言語広場CELULASのコーディネーターをしています。 セルラスではたくさんの言語(ことば)に同時に触れながら、世界中の誰とでもコミュニケーションできる力を育てています。 ことばはスキルでもツールでもなく、人と向き合い思いを伝え分かり合うために、人類が手に入れた尊い宝物です。 大人から子どもまで、多様な人たちが一緒に、ことばと人を育てあう場は、心とことばが同時に育つ場です。